膵臓移植実施のガイドライン


膵臓移植の適応基準
(移植関係学会合同委員会:2010年7月5日)
1. 対象
膵臓移植の対象は、膵腎同時移植・腎移植後膵臓移植の対象は以下の(1)、膵臓単独移植の対象は以下の(2)に該当する者であり、かつ、該当者が居住する地域の適応検討委員会において長期間にわたる臨床データおよび臨床検査をもとに、適応あり と判定されたものとする。なお、レシピエントの評価をする際には、心血管機能と腎機能、および動脈硬化性変化(特に、移植部位である腸骨動脈領域)の範囲に十分配慮する必要がある。

(1) 腎不全に陥った糖尿病患者であること。
臨床的に腎臓移植の適応がありかつ内因性インスリン分泌が著しく低下しており、移植医療の十分な効能を得る上では膵腎両臓器の移植が望ましいもの。
患者はすでに腎臓移植を受けていてもよいし、腎臓移植と同時に膵臓移植を受けるものでもよい。
(2) 1型糖尿病患者で、日本糖尿病学会専門医によるインスリンを用いたあらゆる治療手段によっても血糖値が不安定であり、代謝コントロールが極めて困難な状態が長期にわたり持続しているもの。
本例に膵臓単独移植を考慮する場合もあり得る。

2. 年齢
年齢は原則として60歳以下が望ましい。

3. 合併症または併存症による制限
(1) 糖尿病性網膜症で進行が予測される場合は、眼科的対策を優先する。
(2) 活動性の感染症、活動性の肝機能障害、活動性の消化性潰瘍。
(3) 悪性腫瘍
原則として、悪性腫瘍の治療終了後少なくとも5年を経過し、この間に再発の兆候がなく、根治していると判断される場合は禁忌としない。
しかし、その予後については腫瘍の種類・病理組織型・病期によって異なるため、治療終了後5年未満の場合には、腫瘍担当の主治医の意見を受けて、移植の適応が考慮される。
(4) その他
膵臓移植地域適応検討委員会が移植治療に不適当と判断したものも対象としない。